開業医のミカタ

引っ越しをして気づく、不便の中にある人間らしさ

恒吉さんQA7月04

2017.07.28

アナログに向かう若者たち

衝 動 海辺への転居がもたらせたもの

開業医のミカタ

先月、神戸市垂水区に引っ越しました。

突然、海の近くに住みたい衝動に駆られ、約4ヶ月探した甲斐があり、駅徒歩2分(海岸まで3分)の最高の物件に出会いました。築53年の一戸建リノベーション物件で、すりガラスの引き戸や押入れは昭和のレトロ感を醸し出し、部屋の入口の高さは頭がすれすれで通るほど。

しかしバストイレは最新、天井は高め、水色の壁紙はアンティークな雰囲気によく合います。耐震補強、シロアリ対策も万全で、内装や設備は新築となんら遜色ありません。朝日と鳥の鳴き声に目覚め、一日がスタートする生活は大阪市内のマンション暮らしではなかった習慣です。

ゆえに、この地に移り住んでまだ3週間ほどですが、今までと違う変化や感じることが数多くありました。

近所のコープは23時まで開いていますが、夜になるとほとんど食材がありません。24時間利用可能なATMは一駅先にあり、駅前のコンビニにはコピー機さえもありません。

またゴミの収集日時は決まっており、朝8時前には、指定の分別ポリ袋を持ったご近所さんが遅れまいと、収集所まで小走りする姿を見かけます。

品ぞろえ豊富な深夜営業のスーパーや、いつでも現金が引き出せるATMがどのコンビニにもあった大阪市内のマンション生活のほうがある意味、時間を気にせず生活できたのかもしれません。

しかし時間の流れが気にならなかったマンション暮らしと比べ、こちらには時間のメリハリを実際に体感します。

そして不便と感じるであろうことが、逆に正常な生活にリズムを取り戻した気がします。また海岸沿いということもあり、特に土日はランナー、釣り人、撮り鉄、ロードバイクに乗る人(ロディというらしいですね)たちが最高のロケーションを大いに満喫しています。

私もいつもの軽いジョギングのつもりで日曜日の夕方出発しましたが、山と海の境目の真っ直ぐに続く一本道は、爽快で日常を忘れさせる圧倒的な存在感がある反面、ランナーたちに一切言い訳を許さない厳しさもあります。

というのも、この一本道は信号がなく、走りをやめる理由が自分の体力と精神力以外にありません。

ここで走るランナーが多い理由に、海沿いの景色を楽しむよりは、自己を高めるというもう一つの理由があると、走ってみて感じました。ここ最近、昔流行していたものが再ブレイクしています。レコードで音楽を聴く人使い捨てカメラで写真を撮る人

両者ともスマホがあれば無料で簡単に出来ることですが、なぜ面倒くさいことを敢えてやるのでしょうか? 流行の中心はその時代を知らない、コストやスピードを重視しているはずの20代の若者たちです。この再ブレイクの要因は恐らく原点を知る感覚に近いものがあるのかなと思います。

面倒くささは人や物によっては心地よさ、生きている実感を与えます。着地点よりもその過程。「どこでもドア」でエベレストの頂上に行ったとしても、何の達成感もなく虚無感だけが残るでしょう。

矛 盾 生活も仕事もメリハリが大事

開業医のミカタ

以前、通勤時間は30分でしたが、地下鉄に乗っている時間はそのうちたった5分。

あとは徒歩での移動時間にとられるため、音楽を聴くこと以外何も出来ませんでした。現在自宅から会社まで乗り換え2回で約75分かかります。

自分の顔しか映し出さなかった地下鉄のドア窓の風景も一変し、清々しい空と太陽の光に輝く海を眺める時間があります。この貴重な通勤時間は、癒しと読書と仕事のアイデアを生み出す大切な時間になっています。

電車の中でアイデアをノートにまとめ、一日をイメージし、オフィス到着と同時に形にしていく時間の使い方で、仕事モードのスイッチが入る時間が今までより早まった気がします。

昭和レトロ漂う町並み残る自宅と、ビル群が連なる都会への毎日のショートトリップは、便利と不便、両者のありがたみを実感させます。

いま働き方改革が謳われている中、企業はライフワークバランスのロジックを定着させようとしますが、いままでと変わらず成果は求めます。『休んでいいけど、それ以上の成果をあげよ!』。これ以上の矛盾はありません。

確かに休日を増やし、勤務時間を短縮した結果、効率化が図られ業績が上がった企業もありますが、この政策でGDPが劇的に増える気がしないのは私だけでしょうか。

またプレミアムフライデーで得するのは、関ジャニ∞とロゴデザイナーだけのような気がします。

しかしテレワークの推進には大賛成です。

オフィスにいなくともできる仕事は、効率を考えると大幅なコストダウンと時間の余裕を生みます。自由度が増すとともに責任も増えますが、無駄な会議やアポイントが多い昔ながらの会社には効果が高いと言えます。仕事もメリハリが必要です。

事務作業はオフィス、クリエイティブな仕事は自宅で作業するほうが、効率が上がるというデータがありますので、一概に全ての業種と職種に当てはまるわけではありませんが・・・。

継 承 心地いい自治会のコミュニティ

引っ越してきてからすぐ、近隣12組の自治会に属しました

班長は地域のルールを教えてくれ、優しく、全ての家族構成などを教えてくれます。元々地元の人、震災後に家を建てた人、出戻りのご夫婦、一人暮らし、介護中など様々です。

2週間前に全世帯のフルネームと電話番号が記載された連絡網をもらいました。ここではプライバシーや守秘義務が叫ばれる中、風通しが良い関係性が古くから保たれています

ご近所の挨拶はもちろんのこと、洋館でのコンサートのお知らせ、ゴミ出しの裏技、台風が発生した場合の避難場所などなど・・・生活に必要な情報を教えてくれます。

大阪市内のマンション時代は挨拶程度のコミュニケーションしかありませんでしたが、情報のオープンとクローズのいい塩梅は、心地よい近所づきあいを創出しています。

このコミュニティは利害が一致し、互助の関係が存在します。より快適に暮らすため、つながりがなく疑心暗鬼を生み出す可能性よりは、つかず離れずの距離感でも情報公開することが良好な関係をつくる、昔ながらの地域の知恵があると感じました。

ここに来た理由は、釣りがしたい、ボートの免許を取りたい、マリンスポーツをしたい、音楽をはじめたい・・・など表面上はたくさんあります。

マンション暮らしの利便性は最高でしたが、便利すぎるがゆえに得られないものがあります。

当たり前だった生活観は気づかぬうちになんらかの歪みを引き起こしたのかもしれません(実は最近まで、原因不明の高熱や蕁麻疹が不定期で発症していました)。

利便さはなくなりましたが、不便だからこそ得られる人間関係と自然環境はストレスを軽減させ、生命力を取り戻した気がします。もしかしたら人間の本来のあるべき生活スタイルを求めていたのかもしれません。

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科学の進歩はあらゆるものを、よりコンパクトかつスピーディーにしてきた。

AIが人を超えるときが来るかもしれないが、はたして人類はそれを求めるのであろうか。

便利と不便の境界線は人の価値観と同じで十人十色である。

衝突回避、自動運転、音声認識システム・・・。

これらは安全性とスピードを大いに高めるが、人間の大事な五感を退化させるかもしれない。

利便性と人間らしさのよきバランスが、快適の極みではなかろうか。

「色と言うものはお互いに助けあって美しくなるものだよ。人間と同じことだよ。どっちの色を殺しても駄目だよ。どの色も生かさなければ」

- 武者小路実篤(小説家/1885-1976)

■プロフィール
恒吉雅顕(つねよしまさあき)
2006年
株式会社インベストメントパートナーズ設立メンバーとして参画。
2014年
公益法人日本医業経営コンサルタント協会 コンサルタント認定登録

全国500人以上の個人開業院長、医療法人理事長を中心に、人生設計をサポートし、医院形態、規模、年代、地域性など、集積したデータをもとに主にリタイアメントに向けた資産形成の設計管理を行う。
また士業連携チーム(税理士、会計士、FP、弁護士など)と共に医療法人化、医院譲渡、相続、労務問題、スタッフ教育などの諸問題を幅広く解決している。

2015年
出版:「開業医のための資産形成術幻冬舎メディアコンサルティング」

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イラスト:かたおかともこ