開業医のミカタ

医院の“相続”について、「わからない」を解消しましょう

開業医 相続 対策

2016.08.31

医院の相続において、兄弟間で揉めない秘訣!

医院の相続について、よくわからず不安です

私は次男で、父の医院を継いでから20年目になります。長男は他県で開業し、他に姉と妹がいますが、すでに嫁いでいます。父は高齢で要介護状態が続いており、ヘルパーと私の妻が毎日面倒を看ています。

父名義の自宅兼医院の建物と土地は私が譲り受けるつもりですが、“相続”についてよく分からず、どれくらい税金を取られるのか? 兄弟間で揉めないか? など、不安で心配です。何かいい対策方法は?

先生4

■相談者プロフィール
医療法人整形外科開業医(2代目) K様(55歳)
家族構成
奥様(50歳)、息子(20歳 医大生)、娘(16歳 高校生)
開業20年目/総資産:15,000万円/相続予定資産:約35,000万円
Answer

相続税の大義と歴史

K様のケースは非常によくお聞きします。私は税理士でも弁護士でもありませんので、法的にどうこう言える立場ではありませんが、類似したケースをお伝えすることはできます。

このテーマは私の最も苦手とする分野でしたが、最近ご相談が多いということで、様々な書籍やレポート、論文を読み漁りました。そして、相続という“魔物”と戦う2つの方法を見つけました。

しかし、そもそも相続税というのがどんな税金かご存知でしょうか? それを知るために、相続税が国としてどういう理由でスタートしたか?「相続税の大義の変遷」というテーマでこのコラムをスタートさせていただきます。

■相続税の歴史

相続税の歴史を紐解くと、一番初めの大義は「日露戦争の戦費確保としての非常特別税」です。今から111年前の1905年、毛織物、石油消費税などの新設と共に、増税策の一つとして創設されました。当時は非常特別税法として平和回復時には廃止されるはずでしたが、相続税だけは恒久的な財源として規定されました。西洋から学び、相続税法案が公布されたのです。国策からの財務要求として避けられなかったと考えられます。

日露戦争には勝利しましたが、財政状況は困難を極め、相続税は永久的な財源確保の性質を持つことになるのです。

時は流れて第二次世界大戦後、GHQは日本占領戦略の一つとして財閥解体に着手。さらに「富の再分配」を掲げると最高税率は90%にまで上がり、贈与税が設置されます。その後、1952年サンフランシスコ講和条約により独立回復した日本は最高税率をすぐに70%に引き下げました。 
 
2002年塩川財務大臣の時代、税制改正が行なわれ、相続時清算課税制度が創設されました。ここでの大義は、高齢者に偏っている資産を次世代が受け取り消費を促すことで「経済活性」に繋げるということでした。さらなる経済活性化のため、2015年より相続税の最高税率が55%に引き上げられたものの、基礎控除が引き下げられ、増税となりました。反対に贈与税は緩和され、相続者が存命のうちに子や孫に結婚資金や教育費を非課税枠内で支援することができる制度が設置されました。

しかし、国際的に見れば相続税がない国は存在します。カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、インド、シンガポール、マレーシア、中国などです。お家の台所事情にもよりますが、国によって廃止されたり、設置されたりしています。政府は相続税の国際比較(英国、ドイツ、フランスなど)の公表はしていますが、相続税のない国は公表していません。税率ナンバーワンの国であることを非公開にすることでお金持ちの反感を買わないようにする目論見が見え隠れします。

相続税の大義の変遷

ここからは具体的に相続税対策をどのように行うかをご紹介しましょう。

相続税対策は大きく2種類に分けられます

■ 1.相続税の“攻撃力”を下げる!

“攻撃力”を下げるとは、課税対象額を減らすことで“魔物”である相続税の力を下げるということ。だからと言って、一部のイタリア人のように死ぬまでに財産を使い切ってしまう必要はありません。相続税は所得税と同じく、累進構造(課税対象額の増加に伴い、課税の比率も増すこと)の仕組みを持ちます。資産そのものの“価値”は下げずに“評価”を下げるのです。

例えば3億円を相続する場合、その分の相続税を支払う必要があります。しかし、それが3億円のタワーマンションの最上階となると、課税対象は不動産の評価額となり、最大元値の約2割の6千万円分の相続税を払えば良いということに。相続後、もし3億円で売却できたとすると(タワーマンションはあまり価値が下がらないので)、相続税を引いても、相当な節税になります。しかし、裁判において売却後に、3億円分の所得税を支払うように命ぜられた判決もありますので、専門家の意見も必要です。

また旧医療法人(持分あり)の場合、生命保険で法人の評価を下げ、相続税の“攻撃力”を下げるというスキームがあります。逓増定期保険を法人名義で契約し、解約返戻率が小さいうちに個人で買い取ります。内部に溜まったお金を外に出し、評価を下げることで相続時の負担を減らし、個人資産をつくることができます。

評価を下げるのは相続人の協力と理解が必要不可欠になります。築き上げた財産は人生そのもの。マンションを買えだの生命保険に入れなどは親には言いにくいことかもしれませんが、今後のために勇気を出して言ってみるのが先決かも知れません。

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■ 2.相続者としての“防御力”を上げる!

もう一つの対策は、“魔物(相続)”の攻撃からの“防御力”を上げる方法です。これには生命保険加入以外ありません。特にK様のように土地建物を相続する予定の方は、生命保険で代償分割(相続税などを不動産の代わりに現金で払う)の準備をします。これにより土地は長男、1階部分は次男、2階は長女、3階は次女になどとややこしい遺産の分配をしなくて済みますし、評価に見合った各相続分を後で現金で払うほうがスッキリします。

特に一時払い終身保険の場合、保険料の分、課税される遺産が減り、死亡時に(年齢にもよりますが… )、おおよそ同額の資産を子供に残せます。その際、あらかじめ相続税額をシミュレーションしておき、その額相当の生命保険にしましょう。ただし、こちらもタワーマンションの事例同様、死亡保障額が多すぎると、逆に相続財産とみなされる可能性もありますので要注意です。

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まとめ

紹介した対策の他にも、前述した相続税がない国に海外脱出という裏技も存在します。例えば全財産を持って親子でシンガポール、マレーシアなどで5年間以上の居住が認められると、相続税という概念がなくなります。あまり現実的ではありませんが…。

また、これまで一次相続(親から受ける相続)の対策などを紹介してきましたが、今後は早めに二次相続(自分から子へ)の対策を検討したほうがいいかもしれません。兄弟間で遺恨があるのはやはりお金の話で、クライアントのS先生は3兄弟の長男で実家をもらい、次男はお金、三男は事業(会社)を相続しました。現在三男が一番裕福だそうです。S先生のお父さんは良かれと思いこのように3等分したわけですが、兄弟間の冷戦は今もなお続いており、子供同士は仲良くしてほしいという親の願いは届きませんでした。

開業医の先生方であれば、相続、被相続にかかわらず、ほとんどの方が抱える問題ではないでしょうか? お子様が幼いうちから、また、被相続人が健康なうちから贈与を進めることが大切。今は贈与税の非課税枠として教育費、結婚資金、住宅取得などあらゆる枠が設けられています。ここでの問題は親族間の理解が必要です。もし夏季休暇で集まること等があれば、『相続』をテーマにお話されてみてはいかがでしょうか?

家の美風その箇条は様々なる中にも、最も大切なるは家族団欒、相互にかくすことなき一事なり。

- 福沢諭吉(思想家、慶応義塾創設者)

開業医のミカタでは、いまさら聞けないけど知っておきたいなどのご質問も受付けております。次回もおたのしみに!

■プロフィール
恒吉雅顕(つねよしまさあき)
1972年福岡県生まれ
様々な業種を経験後、2006年/株式会社インベストメントパートナーズ設立メンバーとして参画
2014年/公益法人日本医業経営コンサルタント協会コンサルタント認定登録

開業医に関わる様々な問題解決を経営面、ライフプランから独自の視点でコンサルティングし、現在までに約500人の実践的資産形成の設計を行う。

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イラスト:かたおかともこ