開業医のミカタ

開業医のご夫婦の良好なコミュニケーション術

開業医の主人と上手にお金の話をするコツ

2016.07.28

奥様が開業医のご主人と上手に「お金」の話をするコツは?

開業医の主人と上手にお金の話をするコツ

開業医院長の妻です。現在、経理と受付を担当しています。書類を整理していると、よくわからない領収書や請求書がでてきます。高額な生命保険の契約や、危なそうな投資など、数え上げればキリがありません。問いただすと喧嘩になり、いつも平行線です。

しかしこのままでは将来のことが心配でなりません。主人とお金の話をするためのアドバイスをください。

女性4

■相談者プロフィール
専業主婦 S様(31歳)
家族構成
ご主人(内科開業医院長):39歳、娘:3歳、息子:0歳
開業4年目/売上9,500万円
Answer

3つの立場から考える、お金に関する奥様の役割

このテーマはよく奥様からもご主人からもご相談を受けていました。私の経験上、ご夫婦がお互いの立場を共通にし、お金を使う目的を理解することが上手にコミュニケーションを取れる秘訣だと考えます。

開業医のご夫婦には一般的に大きく3つの立場があります。奥様は『共同経営者』、『母』、『妻』、ご主人は『院長(経営者)』『父』『夫』という立場です。医院のお金は経営者として、子供のことは父母として、2人の楽しみは夫婦として、同じ立場に立って話し合いをすると、意外とうまくいくものなのです。

まずお金の流れについて基本的なことをお互いに理解しましょう。ご存知でしょうが、医院は診療内容に応じた報酬を患者さんからもらうことで収入を得て、仕入れやスタッフの給料などの経費を支払います。そして残ったお金が家庭に入ってくるわけです(個人医院の場合)。

そして家庭に入ってきたお金から毎月の支払いと生活費を差し引きます。そして残ったお金を“万が一のため”“子供のため”“今と将来の楽しみのため”という具合に大まかに振り分けるのです。この一連の流れの中で、お金の行き先を『共同経営者』『母』『妻』と、それぞれの立場に立って、ご主人と一緒に決定していくとスムーズにいきます。

ここで実例をひとつ紹介しましょう。

■開業医の院長と奥様の会話の実例

帰りが毎日遅く、休日もセミナー、会合でほとんど家にいない院長先生がいました。すると奥様が、「たまには子供をどっかに連れて行ってあげてよ!」と愚痴をこぼしたそうです。すると『経営者』の立場の院長先生が一言、「仕事が忙しいから無理!」と。それを聞いた『母』の立場の奥様は「わかった、もういい!」と。こうなるとお互いの溝は深まるばかり。特に開業年数の浅いご夫婦によくあるお話のようです。

このケースの場合、院長先生が『父』の立場で「今度、遊園地にでも行こうか!」と、子供と遊びに行く意思表示をすることが大事だったでしょう。

もちろん、奥様から歩み寄ることもできます。『共同経営者』として「最近忙しいみたいね、何か手伝えることある?」と切り出せばいいのです。そうやって子供と過ごす時間をつくる解決策を奥様から切り出していれば、夫婦間のコミュニケーションが良好になったかもしれません。

立場をそろえることで夫婦関係は良好に

奥様が『共同経営者』の立場になるか、院長先生が『父』になるか。お互いの立場を揃えると同じ視点になり、衝突は避けられます。

実際S様のご家庭のように開業4年目のクリニックでお子様が小さいと、頭の中の優先順位は、院長は『経営者』、奥様は『母』の割合が非常に多いと考えられます。でも、立場が違えば話し合いは進みません。まずは同じ立場からお互いの気持ちを考えてみてはいかがでしょうか。

【Plus One Advice】知ってて得する!恒吉のプラスワンアドバイス

奥様の立場で変わる、開業医の夫婦の賢いお金のロジック

■ 1.共同経営者として

まず共同経営者として医院の経費やお金の動きが、家庭に入るお金に影響を与えることを知ることです。とは言え医院の設備投資やセミナー参加費がどのぐらい売上げに影響があるかは見えにくく、効果は計りづらいです。そのため、ここではわかりやすいものとして給料設定についてご紹介します。

よく「専従者として給与設定はいくらぐらいが妥当か?」というご質問を受けます。以前Episode2でも触れましたが3,000万円の世帯収入の場合、極端な話ですが、院長が全部受取る場合、所得税住民税は1,220万円、3,000万円を2人で1,500万円ずつ分けると税金は980万円になります。前者と後者は年間240万円の差額を生み出し、この差額は30年間で7,200万円になります。7,200万円はお子様2人分の私立医科歯科系の大学の学費に匹敵する数字です。

開業医の奥様の給料設定を変えるだけで家庭の収入がアップ

専業主婦だから1,500万円はもらいすぎでは?と気が引けてしまうかもしれません。しかし「私は領収書を整理しているだけだから…お給料は月10万円でいいです!」というかたくなな奥様は家庭の手取り収入を減らしています(個人医院の場合)。共同経営者の立場としては1,000万円ぐらいの収入があってもいいのではないでしょうか。

また医療法人の退職金積立ては同年齢の男性より長生きする女性の方が多くもらえます。将来の家族の収入であると考えると、できるだけ多くもらった方がいいはずです。奥さんが夫より多く退職金をもらってはいけないという法律は存在しません。

共同経営者として、どうすれば家庭の収入が増えるかを考えると分かりやすくなるはず。共同経営者と言っても、協力するのはクリニックの業務だけではありません。共同経営者として協力してもらうことは、クリニックの業務を手伝ってもらうことではなく、まずは「共同経営者としての立場を活かしてもらうこと」です。

■ 2.母として

次に子供の学費、養育費をどう考えるかです。ちなみにここで『父』『母』の論点は、支援を何歳までどのくらいするか? と、なります。早く独り立ちして欲しい父、できるだけ見守り続けたい母…この境界線を引くのは難しいとは思いますが…。

かつて、息子31歳(歯科勤務医)娘28歳(OL)に、それぞれ300万円ほどの年収があるにも関わらず、15万円ずつ仕送りをしていた60歳のクライアントに驚いたことがあります。

その結果、赤字収支となっているライフプランを凝視し、「いつまで支援を続けますか?」とご夫婦にお聞きしました。お返事は「…どうしましょう?」。余裕があるならまだしも、「これではニートが2人、家に棲みついているのと変わりませんよ」とお話させていただきました。

また、開業医の子供が跡を継ぐ可能性は70%といわれています。それを踏まえながら、まずは幼少期にどんな習い事をさせるか。そして、一体どんな人になって欲しいのか。

お金に余裕があれば、私立歯科医科大相当の学費を準備し、24歳で卒業して一人前になるまでの約2年間は仕送りも必要でしょう。そして承継時には医院をリニューアルオープンするための資金もあったほうがいい。結婚資金はどれくらい支援したいか…そういったことを、どこで切り分けるかを考えると、わかりやすくなるはずです。依存しない子供を育て、独り立ちさせ、子離れするのも親の責任であると考えます。

■ 3.妻として

妻として、夫と将来どう過ごすか?リタイア後、どんな生活がしたいか?それも一緒に暮らすのか、それとも別々の道を歩むのかによって変わってきます。実際、私の知るあるご夫婦は将来別々の道を歩みつつ、それでも離婚はせず、年に1~2回だけ会うことにしようと決めていらっしゃいます。

もちろん、このご夫婦はレアケースかもしれませんが、別々に暮らすにしろ、一緒に暮らすにしろ、将来理想とする夫婦生活を送るためには、その資金を確保する必要があります。そのために有効な手段となるのが投資です。投資と言っても、今回の奥様のご質問のように、ご主人が「やみくもにお金を使っているんじゃないか?」と疑うことがあるかも知れません。

しかし目的に応じた手段が的確であれば、ご夫婦の将来に役立つお金の使い道のひとつとなるのです。ここでいう投資とは、現金の形を変換し、必要な効果を得るということです。

目的に応じた投資という手段

今回の奥様のご質問のように、ご主人が「やみくもにお金を使っているんじゃないか?」と疑うこともあるかも知れません。実際に先物投資で1,000万円の損、さらに未公開株の話に乗っかり、その後、業者と音信不通…このことで奥様と大喧嘩…というクライアントもいらっしゃいます。

実はご主人はお金を増やして、2人の将来に役立てようとしていたのですが…。しかし、目的に応じた手段…つまり、投資のやり方が的確であれば、ご夫婦の将来に役立つお金の使い道となるのです。

■まとめ

ご夫婦でお金に上手に向き合うためには、まず目的を共有合意することです。家族が豊かになるため…お金が少しでも多く入るよう協力してもらうことが必要。医院→家族へのお金の基本的な流れは共通認識として、各ポイントでどの立場で考えてもらうかが大事ということも覚えておいてください。

医院から家族へは『経営者』、家族から子供のためには『母』の立場で、夫婦のリタイア時期のことは『妻』として…。家族の幸せのため、良かれと失敗したご主人の過去のヤンチャは、奥様の大きな包容力で勘弁していただけないでしょうか。

自己侮蔑という男子の病気には、賢い女に愛されるのがもっとも確実な療法である。
- ニーチェ(ドイツの哲学者、古典文献学者 / 1844~1900)

開業医のミカタでは、いまさら聞けないけど知っておきたいなどのご質問も受付けております。次回もおたのしみに!

恒吉雅顕

■プロフィール
恒吉雅顕(つねよしまさあき)
1972年福岡県生まれ
様々な業種を経験後、2006年/株式会社インベストメントパートナーズ設立メンバーとして参画
2014年/公益法人日本医業経営コンサルタント協会コンサルタント認定登録

開業医に関わる様々な問題解決を経営面、ライフプランから独自の視点でコンサルティングし、現在までに約500人の実践的資産形成の設計を行う。

Answer

開業医の皆さまのお悩みを解決します
お気軽にご相談ください

無料相談受付中開業医のための資産形成術
資産形成実践プロジェクト動画開業医のための資産形成セミナー


イラスト:かたおかともこ