Q&A

マイナス金利の開業医への影響は?

マイナス金利

2016.04.27

開業医にとって、マイナス金利のメリット、デメリットとは?

マイナス金利のメリット、デメリットを教えてください

マイナス金利が導入され、ニュースで連日騒がれています。私たちにどのようなメリット、もしくはデメリットがあるでしょうか?

先生3

■相談者プロフィール
皮膚科開業医 M先生(40歳)
開業5年目
売上約15,000万円/事業借入残約8,000万円(金利1.8%)
Answer

マイナス金利の目的と実情は?

2016年1月29日、日本銀行からマイナス金利導入決定のニュースが流れました。欧州の一部の国(スイス、デンマークなど)ではいち早く実施されていましたが、「まさか日本で…」と衝撃を受けた方も多いのではないのでしょうか。それだけ日銀がデフレ脱却に苦しみ、最終手段を講じたと思われます。

過去に日銀が2発の黒田バズーカで市場にお金を回そうとしましたが、2%のインフレ目標は達成できず、マイナス金利という劇薬を市場に浴びせたと言われています。

そもそも日銀の当座預金でぬるま湯に浸かっていたお金が急に冷水を浴びせられ、市場に飛び出したカタチになりました(図A)。

日銀のマイナス金利政策

しかし皮肉なことに、設備投資、住宅取得は芳しくなく、反面住宅ローンの借換えは盛況で、いち早くキャンペーンを打ち出した民間銀行の相談窓口は連日賑わっております。しかしこれも限りあるパイの奪い合いで、顧客を囲いたい銀行は、渋々金利引き下げ交渉に応じざるを得ず、単純に利益(利息)収入が減っただけになっています。

数年前ですが、私のクライアントY様の借換え交渉では、T銀行の杜撰さと狡さと怠慢さを目の当たりにしました。当初Y様はT銀行から8,000万円(2.9%)と他行から住宅ローン6,000万円(2.2%)の借入がありました。T銀行の提案は「住宅ローンを当行で借換えしませんか」というものでした。この件をエージェントとして一任された私は、「住宅ローンの借換えは、貴行の8,000万円の事業借入の金利を先に下げてからしか応じられません」とT銀行の担当に伝えました。

それから一年近く折り返しの連絡もなく、ある日突然Y様からお電話がありました。その内容は「今T銀行が医院に来ていて、借換えの契約をしようとしているが、この金利で大丈夫か?」ということ。ずっと音沙汰もなくY様と直接交渉したT銀行の担当と支店長に腹が立ち、一度この件をリセットし交渉をやり直しました。

結果、2.9%の金利を1.1%でまとめ、返済額全体を約300万円減らしました。義理堅いY様の「開業時に支援してくれた銀行との付き合いは続けていきたい」とのご意向により、交渉がまとまるのが遅れたのは事実です。しかしその沈黙の間に利息収入を搾取し続けるこの企業体を、みなさまはどう思われるでしょうか?

ドライに交渉を進めるのであれば、この8,000万円の案件をT銀行以外の銀行に提示し、条件がよくなるようにドSな銀行いじめ(あくまでお客様のためです)もできました。しかし人情につけこんで交渉を引き延ばす怠慢さは、一般企業では絶対ありえません。近年銀行が揶揄されてきた言葉がいろいろあります。「貸し渋り」、「貸し剥がし」の次は、「貸したまま〜」ですかね。

M様も「借りたまま〜」にならないように金利交渉の余地は充分にあります。M様の経営ビジョンを深く理解し、本物のパートナーとして伴走してもらえるか否か、お付き合いしている銀行を見極めるにはいい時期かもしれません。

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マイナス金利のデメリットとメリットとは?

まずデメリットは普通預金、定期預金の金利が軒並み下がりました。普通預金は大手メガバンクでは0.001%となり、100万円預けて1年間で10円しか受取れません。また時間帯によっては預入に手数料がかかります。例えば1万円を毎月時間外に預けると、その都度108円の手数料が取られ、年間1,296円かかることになります。

「120,000円残っているはずが、118,704円しか残ってない…」ということです。実質年間1.08%のマイナス金利は日銀の0.1%を大きく上回っています。今後預金者にマイナス金利同様、右にならえで手数料を求められる安易な施策が講じられる可能性も否めません。マイナス金利導入後、銀行離れがおき、金庫が売れているみたいです。しかし金庫の購入費を差っ引くとその分マイナスが生じてしまい…踏んだり蹴ったりですね。

メリットは借入が有利になったことです。医院の設備投資、住宅取得、既存の借換え、不動産投資にはいい時期だといえます。デンマークでは住宅ローン金利がマイナスになり、家を買えば利息がつく異常な事態となっているようです。しかし不動産価格は上昇し、金利がマイナスになっても手が届かない国民が大多数だそうです。

日本国内でもその傾向があり、最近の公示地価の発表で、一番地価が上がったのは大阪市中央区心斎橋で、1㎡当たり827万円、前年比45.1%です。実際大阪市ではホテル業者とマンション業者の、仁義なき土地の奪い合いが起こっています。銀座では初めてカプセルホテルがオープンし、一等地で収益を上げるため不動産用途のカタチが変わりつつあります。不動産投資は物件、管理、計画の3つが揃ってなんぼですが、収益性の観点では今いい時期にあります。

2016年4月「資金循環の日米欧比較」という日銀の統計で日本の家計資産の51.8%が現預金です(図B)。マイナス金利導入が日本人の投資リテラシーを向上させ、資産構成を変える起爆剤になるでしょうか。

家計の金融資産構成

これからの経営の戦略は? 基本に忠実に!

現在買い手側が強い市場になっています。銀行のサービスのあり方から逆に学ぶべきところは多いのではないでしょうか。日銀の政策で当座預金金利が見込めず退路を絶たれました。新しいビジネスチャンスだと捉え、時代に選ばれる淘汰されない企業としての意地(維持)が試されるときです。

国民の資産状況を掌握する金融機関として、クライアントについてどう向き合うかというバンキングサービス・アイデンティティの位置づけは、銀行のあるべき姿として世界の銀行で証明済みです。

アメリカからの個人情報開示の圧力に最後まで抵抗したスイス銀行、銀行税引き上げに反発し、「本社を移転する」と自国イギリスと喧嘩したHSBC(香港上海銀行)。日本国内では内輪もめばかりで、最近はゆうちょ銀行の預金上限引き上げに、民間銀行がこぞって反対したぐらいです。国側か顧客側のどちらに立つかは、長い目でみると発展か破綻かの岐路になると考えられます。

医療の現場にも少子高齢化、社会保障費の影響が日に日に増し、厳しい現実が確実に到来しています。基本ですが消費者ニーズに応えるとは「何を求め、何に困り、どうして欲しいか?」をいち早くキャッチし取り入れることです。

日々多忙で考えたこともないのであれば、まずは小さくてもいいからお客様のクレームを一つずつ処理していくこと、二度と起こらないよう対処していくことではないでしょうか。ある医院では匿名のクレームをアンケート形式で集め、改善の進捗をコルクボードに貼り、待合室に公開しています。はじめてから5年が経ちますが、売り上げ6億円を今も維持しています。

クレームと医業収益、クレーム数と離職率

前述しましたが、マイナス金利の今、設備投資には最高の時期です。新年度となりました。患者さんのため、スタッフさんのための新たな投資として設備、増築、自身のスキルアップ、スタッフ教育など検討してみてはいかがでしょうか。

開業医のミカタでは、いまさら聞けないけど知っておきたいなどのご質問も受付けております。次回もおたのしみに!

恒吉雅顕

■プロフィール
恒吉雅顕(つねよしまさあき)
1972年福岡県生まれ
様々な業種を経験後、2006年/株式会社インベストメントパートナーズ設立メンバーとして参画
2014年/公益法人日本医業経営コンサルタント協会コンサルタント認定登録

開業医に関わる様々な問題解決を経営面、ライフプランから独自の視点でコンサルティングし、現在までに約500人の実践的資産形成の設計を行う。

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イラスト:かたおかともこ