MANAGEMENT

地域におけるニーズ、目指す医院の立ち位置から逆算して医院経営を考える

戦略の必要性

2017.07.12

コトラーに学ぶ戦略の必要性

一般企業では「戦略」と「戦術」という言葉はよく耳にします。しかし、病院経営においてはこれらを意識している機関が少ないと思われます。「戦略」とは「何をするか or 何をしないか」を決めることであり、英語でいうところの「What to do」に相当します。一方、「戦術」とは「戦略に基づく行動をどの様に実行するか」で、同じく、英語で言うところでは「How to do」に相当します。

一般の企業に対して、病院経営に「戦略」は必要ないと考える経営者が多いのが実態です。何故なら、「病院とは疾患を抱えた患者を処理迅速に処理すること」であり、一見「戦略」が病院という存在自体に意義が付随していると考えられるからです。しかし、スタッフを雇い、彼らの生活がかかっている以上、「いかに効率良く経営するか」という点は非常に重要な点です。この様な金銭の話をすると、「病院は公共施設であり営利で片付けるべきではない」「人の命を金銭で語っていいものではない」という反論が持ち上がります。

しかし、この様な考えが長く続いたせいで、実態として多くの病院の経営は赤字状態にあります。赤字状態が続けば、サービスを提供する事が出来なくなり、最終的には病院を閉鎖しなくてはなりません。病院が閉鎖してしまっては、どの様な高尚な理念を掲げてもむなしいだけです。つまり、適切な病院経営で、黒字運用を継続するという考えは非常に重要であることが理解頂けるかと思います。

「戦略」については、1980年にフィリップ・コトラーによる本が出版されて40年近くになろうとしています。戦略についての基本概念は40年前にほぼ固まっています。これは勝つためにはどうしたらよいかを説いた内容でビジネスの教科書として非常に有名でビジネスマンには広く読まれています。この本の中には、「戦略」の重要性が説かれています。先に述べた様に、「何をするか or 何をしないか」を決めることは、病院のリソース (資金・人材など) をどの様に配置するかを決めることになります。あれもこれもやる、というのは戦略ではありません。どこをやるかという「集中」、自分の病院を地域の中でどのように位置付けるかを決める「ポジショニング」という概念が病院経営の場合には、まず簡単に適用できると思います。病気に対しては、『予防』→『検査、診断』→『治療』→『慢性管理』という4段階を踏まえることが通常です。これを1つの病院でやることは非常にリソース (資金・人材など) をとられてしまいます。もし、全工程を自分の病院でやるのならば採算性が合うか、採算性が合わないならばどこかと連携できないか等を考えることが必要です。さらに、病院内における病床は、精神病床・感染症病床・結核病床・一般病床・療養病床に分けられます。それらをどの様な割合で置くかも非常に重要です。これは自分の病院の診療圏では、どういうニーズがあって、今後10年、20年先を考えたときに、どうすべきかを考えなくてはなりません。つまり自分の病院を他の病院に対して、どの様な位置づけ (ポジショニング) をとるかということです。

赤字経営だから、「末端の看護師・医師に精神論で頑張らせる」「とにかく笑顔を増やしてサービスを向上させる」というのは間違っても戦略ではありません。これらは、戦略を実現するためには必要な行動かもしれませんが、ひいき目に見ても「戦術」でしかありません。戦略と戦術の違いは、戦略が上位概念であり、戦術は戦略に応じて多数の選択肢があることが通常です。意思決定は必ず「戦略」⇒「戦術」の順番です。ここも間違えてはいけません。先ずは、自分の病院がどの様なポジショニングをとるかを、地域のニーズから考えてはいかがでしょうか?

▼参考文献
1)コトラーの戦略的マーケティング―いかに市場を創造し、攻略し、支配するか:フィリップ・コトラー著(ダイヤモンド社)
2)成功する病院経営:戦略とマネジメント:井上貴裕著(ロギカ書房)
執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部