マネジメント

7万人のゲストを守った、『ディズニーランドの常識』とは?

ディズニーランドに学ぶ『スタッフへの仕事の頼み方』

2017.03.15

ディズニーランドに学ぶ『スタッフへの仕事の頼み方』Vol.1

2011年3月11日、午後2時46分。

かつて経験したことのない規模の大地震が、東日本を襲ったその時、ディズニーランドでは、7万人ものゲストが『夢のひととき』を楽しんでいました。しかしこの地震が、一瞬にしてゲストを夢から現実に引き戻しました。逃げ惑う人々、こども達の泣き叫ぶ声…。『夢の国』は、完全にパニック状態に陥ろうとしていました。

しかし、そんな夢の国とゲストを守ったのは、10代、20代を中心としたキャスト(スタッフ)でした。あるキャストは店舗に陳列されているぬいぐるみを、防災頭巾の代わりにと提供しました。またあるキャストは、お土産として販売しているクッキーやチョコレートを、「必ずみなさんにお配りしますから、その場でお立ちにならないでお待ちください」と声をかけながらゲストに配布しました。

そして余震のたびにゆれる大きなシャンデリアを見て怯える子どもたちに、「みなさん、大丈夫です! 僕はシャンデリアの妖精ですから。必ず、みなさんを守ります。だから、大丈夫ですよ!」と声をかけるキャストの姿もありました。

当たり前ですが、彼らだって被災者です。不安にもなれば、家にも帰りたいとも思ったでしょう。自身の家族のことだって、心配だったはずです。それでもゲストの安全を最優先することができたのは、なぜでしょうか?

上司の指示だから? 年間180日も実施される避難訓練の成果? 5万人が3~4日非難するための食糧が備蓄されているという安心感?

おそらく、どれも違います。彼らは、不安を抱えたゲストにどう接するべきか、なぜそうするべきかを知っていたのです。そして、自分が果たすべき責務とその理由を、明確に理解していたからです。

ディズニーランドでは、指示を伝達するときは、必ず『理由』も伝えるのが常識とされています。たとえば、カストーディアル(清掃スタッフ)を指導するときにも、

「特別なケースを除き、肩・腰・ひざ・くるぶしが一直線になるように立ちましょう。その方が、体に負担がかからないんだよ。

「ダストパン(ちりとり)を持つときは、必ず取っ手のところを持って、腰骨のあたりにつけて持ちましょう。ホウキは、ちょっと前の方に持ちましょう。ゲストに当たったら、大変だからね。

「汚物があった場合は、すぐに白いペーパーで覆いましょう。他のゲストが見ちゃうと気分がよくないよね。それに、白いペーパーは目立つから、ゲストが踏んづけたりしちゃうことも防げるしね。

といった具合です。

ただ仕事を頼む、指示を出すだけでは、「何でそんなことしなきゃいけないの?」「それって私の仕事なの?」と納得してもらえなかったり、反発されたりすることもあるでしょう。

ですから、
・なぜ、『あなたに』お願いするのか
・なぜ、その仕事が必要なのか
・その仕事によって、誰にどんな価値を提供できるのか
これらを明確に伝えることが大事なのです。

なぜ『あなたに』お願いするのか、を伝えることは、「あなたのことを頼りにしていますよ、認めていますよ」というメッセージになります。なぜその仕事が必要なのかが伝われば、自分で工夫して、効率よく仕事をこなせるようにもなります。その仕事にどんな価値があるのかを伝えることは、スタッフに明確な目標を与え、モチベーションにもつながります。

ディズニーランドのリピート率は98%を超えるといわれています。しかしそれを支えているのは、そのブランド力でもなければ、ミッキーマウスでもありません。

自分の果たすべき責務と、その理由を明確に理解しているキャストの『力』です。そして、どんな小さな仕事を頼むのにも理由を伝えるのが常識、というディズニーランドの環境が、そんなスタッフを育てているのです。

あなたの医院では、どうですか? ご自身に置き換えて考えてみると、きっとスタッフ教育のヒントが見えてくるはずです。

▼参考文献
・「9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方」福島文二郎 著/中経出版
・「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった」香取貴信 著/ゴマブックス
・「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった II 熱い気持ち編」香取貴信 著/こう書房
・「ディズニーランド伝説のトレーナーが明かす ミッキーマウスに頼らない本物の指導力」町丸義之 著/こう書房
執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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