インタビュー

遺言状に込める親の思い。それは相続であり魂の継承である

司法書士 廣森良平氏 インタビュー

2014.08.01

司法書士 廣森良平氏インタビュー

専門家から、お話を伺う「スペシャリスト・インタビュー」シリーズ。富裕層には親から子へと引き継がれるものにもさまざまなものがあり、トラブルもあるそう。そんな悲劇を起こさないためには心をつないでいくことが大事だとスペシャリストは語ります。
【プロフィール】
廣森司法書士事務所、代表。不動産業界出身の経験を生かし、債務整理、過払金請求、相続登記手続、遺言書作成、新築・中古不動産の不動産登記などを行う。現在、大阪司法書士会豊能支部 理事を務める。

遺言は親から子へのラストラブレター

——先生がメインで扱っているのは、どういう案件になりますか?

廣森良平氏(以下、廣森):相続に関することと遺言です。特に遺言を作成することを柱としています。

——そもそも遺言というのは、どのようにつくられるのでしょう?

廣森:普通は弁護士や行政書士などに相談にいきます。この方々は法律的な観点から、クライアントの死後に問題や不備がないようにアドバイスするスペシャリスト。まずはみなさん、気になさるのはその部分ですから。そして法律的に問題がないことが明確になってから、遺言状の作成に入るわけです。

——法律上の整理ができればいい?

廣森:ここでもう一歩、突っ込んで聞くことが必要なんです。税務のことや不動産のこと。そこを抑えておかないと、やはり遺言は書けないんですよ。

——その部分で先生のこだわりは?

廣森:スペシャリストが集まれば、カタチはできます。でも、存命中にできることのアドバイスというのもありますよね。例えば生前に税金の掛からないお墓とか仏壇で5〜600万を使っていただければ、税金が下がりますよ、とか。

——では遺言状ではなく、遺産分割協議のときはどうですか?

廣森:例えば不動産があって、相続人が2人いるとします。仕事をしている長男と専業主婦の長女です。親とすれば平等に渡したい。そこで不動産の名義を半分ずつ共有させて売却したとします。仮に5000万円の売却利益が出ると、それぞれは2500万円ずつの譲渡所得となる。

——そこで問題が起こるわけですね?

廣森:長女の方は2500万円の年収になってしまう。すると扶養家族からも外れるし、国民健康保険や住民税がすごいことになってしまいます。そこで代償分割を行う。まずはすべてを長男名義にし、そして売却後に代償分割として、売却益の半分を渡すと遺産分割協議書にしておくのです。

——そういう話ができるのも、クライアントの状況を理解しているからですね。

廣森:遺言を書く上で絶対に把握しないといけないのは、財産がどれだけあるかということ。でも、それを聞き出すのが難しい(苦笑)。一般の方は、なかなかすべてを話したがらないんですよ。

——どうしても慎重になるんですね。

廣森:心がけているのは、クライアントのお宅に伺うこと。そして最初にある程度の内容掌握をします。すると大体は、長男にいっぱいあげたいと。しかし当然のことながら次男三男がいる場合がある。

——どのように対応するのでしょう?

廣森:親から子供に対する手紙…ラストラブレター的なものを書くんです。生い立ちからはじまり、就職したときのこと、お母さんとの出会い、新婚当時の苦労話。そして長男が生まれたときの歓びや大変だったこととか。続いて次男、三男が生まれたとき、子育ての苦労話などなど。

そして、なぜ全部を長男に渡したいかということになると、やはり自分も財産は長男が継ぐものだと親から教えられてきた、と。それをみんなが従うからこそ、本家は今でも繁栄している。それはウチも同じで、それは小さいときから話してきたよな…という手紙を書くわけです。

もちろんそれだけではなく、きちんと相続税のことや分与のことも押さえた遺言状に仕上げていくのです。

——クライアントが望んでいることを引き出し、伝えたいことを盛り込み、現実的なプランを練っていくわけですね。

廣森:お金や法律のことだけじゃなく、孫子の代まで宝物になる様な遺言ですよね。

——それを引き出すまでは、やはり大変だと思います。特に、最初にクライアントに会うときというのは、難しいのでは?

廣森:たいていは紹介なんでね。むしろそれより、いかにクライアントの生き様や子どもに対する思いを引き出すかということが大事。そして人間関係を築いていけば、やがて心は開けるんです。

——伺っていると、相続というより継承という言葉が合う気がします。

廣森:そうなんです。財産を継承するのも大事です。ですが同じように親の気持ちであったり、理念であったり…親の魂や気持ちを継承していくことが、相続なんじゃないかと思うんです。

司法書士 廣森良平氏 インタビュー

お医者さまも大切なのはマインドを継承すること

——開業医の先生方はいかがでしょう? 大きく2つのパターンがあると思います。代々医系で親からの相続もあるし、子供にも相続していく方。もう一方は、一代で築き上げ、それを初めて子どもにつないでいく方。違いはありますか?

廣森:ありませんよ。みなさん自分が医者を志したマインドがありますよね。そして医者になるためには高度な教育を受ける必要があり、それは親が受けさせてくれたという歓びがある。それを思えば、自分の子どもにつないでいきたいと思うでしょう。だから、お医者さまだからといって特別なことはありませんね。

——マインドの継承がメインであるということですね。とはいえ現実的な部分も抑えなければなりません。贈与税のこととか…。そういう具体的なことは、どこから手をつければいいんでしょう?

廣森:誰に相談するか…相続に強い税理士と組んでいる司法書士です。民法と相続法と税法を絡めた生命保険の提案とかまで考えてもらえるか、となりますから。

——不動産はどうですか。今、インフレで不動産運用を考えておられる方が多い。

廣森:お医者さんは、医療法人を作りますよね。個人としては給料をもらっているわけです。するとやはり税金の問題が出てくる。住民税や所得税が高いわけです。そして医療法人として考えてみても法人税がありますからね。これに対して、どう対策を立てるか、となります。

——確かに医療法人にしても、所得税の部分はありますからね。

廣森:そこでポイントとなるのが、生命保険や不動産投資になると思うんですよ。それらを使ったプランを僕はお話することができるんです。だから相続や遺言をつくるにあたって、そのときに向かってどのようにアプローチしていくかまでプランニングすることができる。

——相談者が若いお医者さまでも、長い目で見たプランニングができるのですね。

廣森:いろいろな不動産会社・金融機関・証券会社の方が先生方のところには営業にくると思います。いろいろな人にいろいろなことを言われて、いったいどうすればいいんだ?と。そんなときに相談してもらえればと思いますね。

僕は自分の利益誘導のためにお話するわけじゃありません。僕に提供できるのは“考え方”だけ。そして、その出口として、相続対策であるとか、遺言の作成を行っているわけです。もちろん相談料はいただきますが、第三者的な立場でお話を伺いたいんですよね。だから、いろいろなところから営業されて疲れたとき、ウチにお声がけいただければと思います。

458件の開業医を成功に導いた成功事例集