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逆ハーフタックスプラン効果的な節税手段と言えるのか?

金融商品を活用して節税を考える

2017.08.28

金融商品を活用して節税を考える場合の注意点

「税金」というのは多くの院長・理事長先生方にとって頭の痛い課題なのではないでしょうか。今回は、一部の医療法人において税金対策として活用されることのある「逆ハーフタックスプラン」についてご説明します。

逆ハーフタックスプランとは、法人などが加入できる養老保険の一種で、死亡保険金の受取が「法人」で、満期保険金は「被保険者である従業員や役員」が受け取るものを指します。

似た名前の養老保険に「ハーフタックスプラン」というものがありますが、こちらは死亡保険金を「被保険者である従業員や役員の遺族」が、満期保険金を「法人」が受け取る仕組みです。全従業員が加入する必要があり、満期保険金は退職する従業員の退職金にあてることができるので、福利厚生プランとも呼ばれています。

税務的には、支払保険料のうち死亡保険金に対応する1/2を「福利厚生費」として、残りを満期保険金に対応する分として「資産計上(益金)」します。このような理由で「ハーフタックス」と名づけられています。

前述のように「ハーフタックス」と「逆ハーフタックス」では、死亡保険金と満期保険金の受取人が逆になってことが、「逆」という言葉が用いられている所以です。

この逆ハーフタックスプランは一時期、「節税ができる保険」として注目されていました。

それは、支払い保険料に関する会計処理方法が法令に明記されていないことを理由に、死亡保険金にあたる部分は「保険料」として、満期保険料にあたる部分は「給与」として扱うことによって、保険料で全額を法人において損金算入することで大幅な節税を可能にしていました。

さらに、個人で満期保険金を受け取った場合、被保険者は保険金を「一時所得」として処理することができるため、個人側の所得税の負担も非常に小さくなるという仕組みです。

つまり、経営者を被保険者とする逆ハーフタックスプランにすれば、法人でその保険料総額を損金算入することにより法人税を圧縮しつつ、個人で満期保険金を受け取り、支払った保険料を、収入を得るために支出した金額として総所得から差し引くことで、税負担を抑えるという節税スキームだったわけです。

このスキームを使えば大幅に税金を圧縮できました。しかし、このスキーム最大のデメリットは、先程も述べたように、税法上の根拠がないということで、「法人の利益を、税負担がほとんどなく、経営者に置き換えられるのはおかしい」と、国税庁も問題視しています。

実際、国税当局が逆ハーフタックスプランを活用した節税を否認するケースが増えています。2012年1月には、最高裁まで争われた事例もありました。

逆ハーフタックスプランにおける争点は以下の2点です
①保険料を全額法人で損金算入すること
②支払い保険料総額を、収入を得るために支出した金額とし、一時所得から差し引くこと

2012年のケースでは、②の一度法人の費用としたものを、再度個人の必要経費として申告した点が問題となり、収入を得るために支出した金額(必要経費)は保険料の半額のみという最高裁の判決が下ったのです。

この判決以降、逆ハーフタックスプランの節税効果は減少したと言われています。さらに、①の部分(保険料の扱い)においてもまだ曖昧な部分があり、①に関しても今後認められなくなるというリスクもあります。そして、その節税を否認されるリスクに加えて、養老保険そのもののリスクとして、多額の保険料を支払うことになるため会社の資金繰りに悪影響を与えるという面も忘れてはなりません。

以上のことなどもあり、逆ハーフタックスプランの養老保険は多くの保険会社が取り扱いをやめています。

判決以前の逆ハーフタックスプラン然り、太陽光やタワーマンションを利用した節税然り…「ある時点では」認められている節税スキームや、節税効果が高いとされている商品は存在します。万が一、それが変わった場合、租税回避として節税を否認されるリスクを負うのは契約者となる皆様です。そしてそれを認めるか否かを決めるのは、国税局であり税務署です。その保険を販売した募集人でも、会計処理をした税理士でもありません。

今回の逆ハーフタックスプランに限らず、何らかの金融商品を活用して節税を考える場合には、それが何らかの隙間を利用したスキームであるのであれば、その節税スキームが否認されるようになる場合のリスクも考慮し、出口戦略を立てた上で、導入されるか否かの判断を下されることをお勧めします。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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