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開業医と勤務医のメリット・デメリット(税金面)

開業医と勤務医、どちらを選択するべきか

2017.02.13

開業医と勤務医、どちらを選択するべきか?Vol.2

開業医と勤務医を税金面から比較した場合、どちらの方が有利なのでしょうか。
まず、いずれにおいても利用できる節税策から確認していきましょう。

■生命保険料、ふるさと納税による税金対策

開業医、勤務医ともに税金対策として利用できるのが「生命保険料」と「ふるさと納税」です。

生命保険料は種類によって3つの控除「一般の生命保険料控除」「個人年金保険料控除」「介護医療保険料控除」を利用することができます。

例えば、保険医協会では保険医年金を実施していますが、この掛金は「一般の生命保険料控除」に該当するため、節税に利用できます。こうした医師ならではの生命保険も活用しながら3つの控除をうまく利用できれば、最大所得税で12万円の所得控除が適用されるという仕組みです。

個人経営であれば、開業医であってもこの12万円という上限は勤務医と変わりませんが、法人化した場合は、法人保険を利用し、全額若しくは一部を損金計上しながら、退職金の積立が可能になります。この違いについても併せて覚えておきましょう。

「ふるさと納税」も忘れてはなりません。簡単に言うと、結局支払わなければならない住民税の一部を先払いし、寄付金控除の適用により実質2000円の負担しかせずにお礼の品が受け取れるという制度ですが、平成27年度税制改正で、平成28年以降のふるさと納税については、5団体以内であれば、ふるさと納税ワンストップ特例の適用を受けることが可能となり、全額控除されるふるさと納税枠も、約2倍に拡充され、より簡単で取り組みやすくなっていますので、面倒でやっていなかったという方にもお勧めです。

■開業医特有の税金対策

勤務医はどうしても給与所得がメインのため、上記のような節税に限定されます。その一方で開業医は、通常の企業経営と同じで利益が上がっている場合には、様々な節税方法を利用することができます

例えば、診療所ならびに自宅で仕事を行うためのパソコンを年末に購入し、税金対策として中小企業の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例制度を利用し一括償却されている開業医の先生は多いですし、必要文献を購入した際の図書研究費、先生同士の交流で食事した際の交際費、学会などに出席する際の交通費など経営をしているからこそ出せる経費は多く存在します。

さらに医療法人化されている場合は、個人の所得税、法人の法人税の両面で税金対策を行うことが可能ですし、法人保険等、法人ならではの経費を計上することも可能になります。そもそも法人税率の方が、所得税率よりも低く設定されていますので、法人に利益を残した方が現役時代の税金対策としては有利と言えますが、医療法人の利益余剰金が膨らむことで、旧医療法人であれば、相続時の相続税が、新医療法人で後継者不在であれば、医療法人に残った資産は国又は地方公共団体に帰属することにつながりますので、注意が必要です。

こうして考えると、節税面では明らかに勤務医より開業医の方が、個人開業医より医療法人の方が有利といえますが、そのメリットを享受する方法は開業と法人化のみではありません。実際に、資産家一族や、高所得の芸能人も利用している方法で、資産管理等を目的とする一般法人を設立し、その法人で給与を受け取ったり、法人保険を利用して退職金を積み立てたり、資産運用を行ったり、必要経費を計上したりされている勤務医の方がいらっしゃることも事実です。

もし、開業医か勤務医かで悩まれている方がいらっしゃれば、短期的なメリットのみで考えず、長期的な視点で試算した上で、ご自身にとって有利と感じられた方を選ばれることをお勧めします。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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